手付解除と履行の開始が引き起こすトラブルとは?
不動産・相続について勉強中の、ワンダーランドMAIMAIです。
不動産売買契約の時に、「手付金」や「手付解除」について、問題となる事があります。
1.今回は「手付金」について、説明します。
不動産売買契約における手付金は、取引の信頼性を保つための大切な手段ですが、契約解除の際にその扱いが問題になることがあります。
特に「履行の開始」がトラブルの原因となることが多いですが、もう一つ重要な要素として「手付解除の期限」があります。
手付解除の権利を行使できる期間には期限があり、この期限を過ぎると手付解除は無効になります。
本ブログでは、手付金について色んな側面から説明していきたいと思います。
2.手付金と手付解除の基本とは?
手付金とは、不動産売買契約を締結する際に買主から売主に支払われる金額で、契約の証拠や取引への真剣さを示すものです。
手付金には「解約手付」と呼ばれる性質があり、
一定の条件下で買主または売主が契約を解除することができます。
この手付解除の制度を利用することで、買主は手付金を放棄し、売主は手付金の倍額を返還することで契約を解除することができます。
しかし、重要なのは、手付解除ができるのは「履行の開始」前までであり、さらに契約書に定められた期限内に行使しなければならないということです。
3.履行の開始とは何か?
履行の開始は、不動産売買契約において、手付解除を行うかどうかを判断する上で非常に重要な概念です。
履行とは、契約に基づく義務の実行を指し、売主または買主がその義務の一部を実際に履行し始めたときに「履行が開始された」と見なされます。
具体的な例としては、買主が売買代金の一部を支払ったり、売主が物件の引き渡し準備を始めた場合がこれに該当することが多いです。
しかし、どの時点で履行が開始されたかの判断は、ケースバイケースであり、取引の内容や状況に依存します。
こうした不確定要素が、トラブルの原因となることも少なくありません。
この点について、民法第557条第1項には以下のように規定されています。
民法第557条(手付)第1項
買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
この法律の規定に基づき、手付解除を行うためには、相手方が履行に着手する前に行使する必要があります。
履行に着手された後は、手付解除の権利は消滅します。
4.「履行の開始」に関する、過去の裁判
履行の開始が認められるかどうかは、実際の裁判例においても多くの議論がなされてきました。
履行の開始が認められた判例と認められなかった判例をいくつか紹介していきます。
履行の開始が認められた判例
①最大判 昭40・11・24
この判例では、契約において中間金の支払いが行われた場合、それが履行行為の一部と見なされ、履行の着手が認められることが示されています。
具体的には、買主が契約締結後に中間金を支払い、その後も履行期に向けた準備を進めていたことが履行の開始と判断されました。
この事例では、履行の一部であっても実際に行われた場合、それが履行に着手したと見なされています。
②最二判 昭41・1・21
この判例では、買主がいつでも残代金を支払い得る状態にあった場合、それが履行の開始とされると判断されています。
債務の履行期が到来していなくても、買主が残代金を準備しており、実際に支払う意思と能力があると認められた場合には、履行の着手が認められることがあるという重要な判例です。
履行期前であっても履行着手が認められることがあるようです。
③最一判 昭57・6・17
この判例では、買主が残代金を準備し、再三にわたって売主に対し契約の履行を催告した事例で、履行の着手が認められました。
売主に対して履行の準備を求め続け、かつ残代金を実際に提供できる状態であったことが、履行の開始と見なされる決定打となったようです。
履行の開始が認められなかった判例
❶最三判 平5・3・16
この判例では、買主が契約締結の1か月後に測量を実施し、その後8か月後に残代金を用意しましたが、これは履行の着手には該当しないと判断されました。
このケースでは、測量や残代金の用意が履行期に対する前提行為であるとはいえず、履行の一部とは見なされなかった点がポイントです。
❷東京地判 昭39・12・22
この事例では、買主が口頭で売主に対して履行を催促していましたが、残代金を用意していなかったため、履行の提供が認められず、履行の着手には該当しないとされました。
履行に向けた具体的な行動が行われなかったことが、履行の開始を否定された要因です。
これらの判例を踏まえると、履行の開始が認められるかどうかは、具体的な行為がどれだけ契約履行に直結するかが大きな判断基準となるようです。
履行に着手したと認められた行為は、残代金の提供や実質的な履行準備など、契約履行の進行に直接関わるものであることが多いです。
一方で、準備行為にとどまる場合や、履行期と密接な関連がない行動については、履行の着手が否定される傾向にあります。
このように、履行の開始に関する判断はケースバイケースであり、どの行為が履行に該当するかは契約の内容や具体的な状況によって異なります。
先に挙げた裁判事例を見ても、判断はそれぞれの個別の事情が考慮されており、一概に基準を設けることは難しいのが現状です。
5.手付解除の期限の重要性
不動産売買契約における手付解除には、契約書に定められた期限があり、この期限を過ぎると手付解除は認められず、契約解除には別の方法が求められます。
手付解除を行える期間を過ぎてしまった場合、通常は「違約解除」として扱われ、契約違反として違約金が発生します。
違約金の額については、契約書に明記されていることが一般的です。
金額は売買価格に対する割合で定められることが多く、具体的な割合は取引内容や契約によって異なります。
一般的には、売買価格の1割から2割程度が違約金として設定されることが多い傾向にありますが、どの程度の金額になるかは、契約書に基づいて具体的に確認することが大切です。
こうしたリスクを回避するためには、手付解除を希望する場合、契約書に記載された期限をよく確認し、迅速に行動することが重要です。
6.履行の開始と手付解除のトラブル予防
履行の開始や手付解除の期限を巡るトラブルを防ぐためには、契約書の作成や取引進行時に、次の点に注意することが重要です。
「契約書で重要なタイミングや条件を明確にする」
履行の開始がいつ発生するかは状況によって異なるため、契約書には、取引における重要なタイミングや条件を具体的に記載しておくことが大切です。
例えば、「売買代金の支払い時期」や「物件の引き渡し日」などを明確に記載することで、後のトラブルを防ぐことが期待できます。
「手付解除の期限を明確に設定する」
手付解除が行使できる期限を契約書に明記し、双方がその期限をしっかりと理解していることを確認しましょう。
期限を明確に設定することで、後から手付解除に関する誤解や争いを避けることができます。
「不明確な点があれば、まず契約相手や仲介会社に確認する」
履行や手付解除に関して不明確な点がある場合、最初に契約の相手方や仲介会社に確認することが重要です。
契約内容の解釈や不安点について事前に話し合いを行い、相互理解を深めることで、スムーズに解決するケースも多いです。
「専門家への相談も選択肢の一つ」
もし契約の解釈や手続きに関してさらに不安が残る場合や、複雑な問題が生じた際には、弁護士や不動産コンサルタントといった専門家に相談することも選択肢の一つです。
専門家の助言を得ることで、リスクを最小限に抑えることができます。
7.まとめ
不動産売買における手付金、履行の開始、手付解除の期限は、取引を円滑に進めるための重要な要素です。
これらを正しく理解し、契約書にしっかり反映させることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
契約内容について不安がある場合は、契約相手や仲介会社と確認しながら、取引を進めることが大切です。
必要に応じて専門家の助言を受けることで、安心して取引を進めることができます。
不動産や相続についてお困りの際は、ぜひワンダーランドにご相談ください。
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