被災マンション法とは?
不動産・相続について勉強中の、ワンダーランドMAIMAIです。
2024年元旦、石川県能登半島で地震が起こり、多くの家屋が倒壊しました。
被災した場合に、多くの人々で共有するマンションはどのように取り扱うのでしょうか。
被災したマンションの復旧や建て替えに関する、被災マンション法という法律があります。
被災マンション法
被災マンション法は、災害によりマンションが被害を受けた場合の再建等への対応に関する法律です。
平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災後に公布された法律で、正式名称を「被災区分所有建物の再検討に関する特別措置法」といいます。
政令で指定された大規模な災害によって、全部または一部が滅失したマンションの再建や売却、取り壊しを行いやすくするための特別な措置です。
被災マンション法が適応される一部滅失は、「大規模一部滅失」のことで、建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合のことです。
通常、区分所有マンションの建て替えや復旧、管理などについては、区分所有法が適応され、その法律に沿っていろいろなことが決められます。
しかし、大きな災害等で、マンションが全壊してしまった場合の再建やその土地の売却、大規模一部滅失の場合のマンションやその敷地の売却、建物の取り壊しなどについては、区分所有法には決まりがありません。
区分所有法に決まりがないものは、民法に則り対応することとなり、その場合は、共有しているものの取り扱いについて全員の同意がないと処分ができないということになります。
被災マンション法がなければ、大規模な災害によって滅失または大規模一部滅失となった区分所有マンションは、区分所有者の一人でも反対したら建替えも取り壊しもできず、また所有者の誰かが地震のため行方不明になったり、どこにいるか分からないという場合も、処分ができなくなり、全然復興に向けての話が進められないということになるのです。
そこで、政令で指定された大規模災害により、建物が全壊した区分所有建物について、区分所有法の内容を読み替えて準用する、被災マンション法が作られました。
過去の震災の教訓
制定された当初は、大規模な災害でマンションが全部滅失した場合には、5分の4以上の多数決でマンションを再建することができるとされているだけで、一部が滅失した場合についての対応は定められていませんでした。
阪神大震災の際には、倒壊したマンションの跡地に、マンションを建て直すことが想定されていたためです。
2011年の東日本大震災では、多数のマンションが一部滅失によって、極めて深刻な被害を受けました。
しかし、全部滅失ではないため、当時の被災マンション法はニーズがなく、適用されませんでした。
一部滅失したマンションの中には、民法に基づいて、区分所有者全員の合意で解体されたものもあったそうです。
こうした状況をふまえ、見直しの必要性が認識され、被災マンション法では、一部滅失のうち、大規模な一部滅失の場合には、建物取壊し、建物取壊し・敷地売却、あるいは建物・敷地売却のいずれかの決議ができるよう、改正されました。
区分所有マンションの全部が滅失した場合
政令で指定された大規模な災害で、マンションの全部が滅失した場合、建物がなくなり土地だけを共有している状況になった土地の共有者(敷地共有者等)は、その政令の施行の日から3年までの間は、集会を開き、管理者を置くことができます。
管理者は、土地を管理する管理人ではなく、話を取りまとめるリーダーのような存在です。
管理者を置いた場合は、原則として管理者が、集会を招集します。
土地共有者それぞれに集会を行う旨の連絡をしなければなりません。
連絡先のデータなどが残っていればそこに連絡しますが、皆さん被災され、マンションが無くなり居住場所を奪われてしまっているので、各地に散り散りになってしまい、連絡を取ることが難しいことも多いでしょう。
調べたけれども、土地共有者の連絡先がどうしてもわからなかった場合には、その共有している土地に立て看板などを建てて、見やすい場所へ掲示して知らせるということで、集会の招集を通知したこととすることができます。
管理者が集会を招集しない場合でも、議決権の5分の1以上を有する敷地共有者等が、集会を招集するように求めることもできます。
区分所有建物はもうないので、新たに規約を作ったりすることはできません。
マンションの全部が滅失した場合には、敷地共有者等の5分の4以上の多数決で、新しくマンションを建てる決議と、敷地を売却する決議をすることができます。
新しくマンションを建てる決議を、「再建決議」といいます。
建物を再建するには、少なくとも従前の敷地の一部を含む土地に建物を建築しなければなりません。
津波で被害を受け同じ場所に建てることに抵抗があるため、高台に移して新たに建物を再建しようというのは、再建決議ではできず、その場合は滅失したマンションと、新たに建てるマンションは、また別の話ということになります。
再建決議や敷地売却を目的とする集会を開くには、集会の日の2か月前までに敷地共有者に招集の通知をしなければなりません。
この通知は、敷地共有者が所在する場所に宛ててすることが原則ですが、先ほども書いたように、敷地共有者の所在が分からない場合には、敷地内の見やすい場所に掲示をしてすることができます。
また、その集会の少なくとも1月前までに、敷地共有者等に対し再建や売却についての説明を行うための説明会を開催しなければならないとされています。
被災マンション法による全部滅失時の再建決議
被災マンション法における全部滅失時の再建決議には、敷地共有者等の議決権の5分の4以上の多数で、再建決議をすることができます。再建決議では、設計の概要・費用の概算額・費用の分担に関する事項・再建建物の区分所有権の帰属について、定めなければなりません。
また、再建決議は、区分所有建物の滅失にかかる災害を定める政令が施行された日から起算して3年以内に行わなければなりません。
再建決議の議事録には、敷地共有者の再建決議への賛否を記載する必要があります。賛成した者と反対した者では、後の対応が変わってくるからです。
再建の決議があれば、集会を招集した者は、遅滞なく、再建の決議に賛成しなかった敷地共有者等に対し、再建に参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければなりません。
具体的に言うと、敷地に新しい区分所有マンションを建てることが決定したらすぐに、集会で賛成しなかった人に対して、参加するかどうかを2か月以内に回答するように書面で求めるということです。
その書面による回答で、参加しないことを表明した者や回答をしなかった者は、建て替えの参加者から敷地の共有持ち分を時価で売り渡すことを請求されます。
この手続きは、区分所有マンションの建て替えの手続きと同様のものです。
売渡請求権は「形成権」と解釈されており、権利者の意思表示のみで法律効果を生じさせられる権利です。
時価で売り渡すことを請求された敷地共有者は、たとえマンションの再建に納得できていなかったとしても、請求された時点で契約は成立し、時価で売り渡さなければなりません。
こうして再建決議の反対者が売渡請求されることにより敷地共有者ではなくなり、再建に賛成するものだけが残り、被災マンションの再建がすすめられることになります。
自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインを利用した手続の流れ
手続きの方法としては、まず、最も多額のローンを借りている金融機関等へ、ガイドラインを利用した手続への着手を希望することを申し出ます。
金融機関等から借入先や借入残高、年収、資産(預金など)の状況などを聞かれることになりますので、あらかじめ借入れ状況を書き出しておいたり、資料を準備しておきます。
申出を行った金融機関等から手続着手について同意が得られた後、地元弁護士会などを通じて、東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関に対し、「登録支援専門家」による手続支援を依頼します。
手続着手に同意を得られた後も、対象になり得る債務者の要件に該当しないことが判明した場合は、金融機関等から異議が述べられて債務整理不成立となることがあります。
金融機関等に債務整理を申し出て、「登録支援専門家」を経由して、金融機関等へガイドラインに適合する「調停条項案」を提出・説明し、すべての借入先から同意が得られた場合、簡易裁判所へ特定調停を申し立てます。
特定調停手続により調停条項が確定すれば債務整理成立です。
倒壊した家屋のローンの残債は減免され、新しく家を再建するための借り入れも行いやすくなります。
新たな生活のスタートが切りやすくなりますね。
被災マンション法による全部滅失時の敷地売却決議
区分所有マンションが大規模な災害で全部滅失した場合、敷地共有者等の議決権の5分の4以上の多数で、滅失した区分所有マンションの敷地の売却を決議することができます。
決議の中で、売却の相手と、売却代金の見込額を定めなければなりません。
敷地売却決議の手続きは、基本的には再建決議とほぼ同様です。
敷地売却決議の議事録には、敷地共有者が、敷地売却について賛成しているのか、反対しているのかも記載する必要があります。
敷地売却決議があった時には、集会を招集した者は、遅滞なく、敷地売却決議に賛成しなかった敷地共有者に対して、敷地売却決議の内容で売却に参加するか否かを回答するよう書面で催告しなければなりません。
その回答期限は催告を受けた日から2か月以内です。
催告の期限、2か月が経過すると、敷地売却決議に賛成した者は、反対した者や催告の期限内に回答しなかった者に対して、敷地共有持ち分等を時価で売り渡すべきことを請求することができます。
この請求は、反対した者の意思とは関係なく、請求された時点で成立するものです。
「形成権」と解釈され、不参加者の意思にかかわらず契約が成立したものとみなされます。
不参加者が参加者に持ち分を売り渡すことで、敷地共有者は売却に賛成した者だけになります。
売却代金は、敷地の権利の割合に従って、敷地共有者等に分配されることになります。
敷地利用権が所有権以外である場合(賃借権、地上権等)、その賃借権等が売却の対象となります。
そのため、敷地利用権が賃借権であれば、地主の承諾を得る必要があります。
区分所有マンションの一部が滅失した場合
被災マンション法では一部滅失の場合の定めがありますが、これは、マンションの価格の2分の1超に相当する部分が滅失した場合のことで、「大規模一部滅失」という状態です。
被災マンション法では、大規模一部滅失の場合における、①建物・敷地売却決議、②建物取壊し・敷地売却決議、③建物取壊し決議の3つのしくみが設けられています。
それぞれ、5分の4以上の賛成で決議することができるのですが、決議内容により、「何の」5分の4以上の賛成が必要なのかが違います。
このことについては、後のそれぞれの説明で書いていきます。
被災マンション法が適応される、政令で定める災害で、区分所有マンションの一部が滅失した場合には、その政令の施行の日から1年を経過する日までの間は、これまでと同様区分所有者の集会を開くことができます。
その招集通知は、区分所有者が災害発生後に管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときは、その場所に宛ててすれば足り、また、集会を招集する者が区分所有者の所在を知ることができないときは、建物又はその敷地内の見やすい場所に掲示してすることができます。
ただし、集会を招集する者が当該区分所有者の所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力は生じないとされています。
①建物・敷地売却決議、②建物取壊し・敷地売却決議、③建物取壊し決議の招集通知は、集会の日より少なくとも2か月前に発しなければなりません。
また、その集会の少なくとも1月前までに、区分所有者に説明を行うための説明会を開催しなければならないとされています。
一部滅失時の①建物・敷地売却決議
これは、大規模一部滅失した建物をそのまま、敷地とともに売却するための決議です。
政令で定める災害で、区分所有マンションの一部が滅失した場合、集会で、「区分所有者」、「議決権」及び「当該敷地利用権の持分の価格」の各5分の4以上の多数で、区分所有マンション及びその敷地を売却する旨の決議をすることができます。
全部滅失時の再建決議や敷地売却決議と同様に、会議録には建物・敷地売却決議へのそれぞれの区分所有者の賛否も記載しなければなりません。
建物・敷地売却決議がされ、売却することが決定すると、集会を招集した者は、賛成しなかった区分所有者に、建物・敷地売却に参加するかどうかを2か月以内に回答するように書面で求めなければなりません。
建物・敷地売却に反対し、参加しない区分所有者は、その権利を時価で売り渡すように請求され、請求された時点でその契約が成立することになります。
一部滅失時の②建物取壊し・敷地売却決議
これは、大規模一部滅失した建物を取り壊し、建物のない更地の状態にしてから、敷地を売却するための決議です。
政令で定める災害で、区分所有マンションの一部が滅失した場合、集会で、「区分所有者」、「議決権」及び「当該敷地利用権の持分の価格」の各5分の4以上の多数で、区分所有マンションを取り壊し、かつその敷地を売却する旨の決議をすることができます。
決議の手続きは、①建物・敷地売却決議とほぼ同様です。
一部滅失時の③建物取壊し決議
これは、大規模一部滅失した建物を取り壊し、建物のない更地の状態にし、更地となった敷地をそのまま共有する決議です。
政令で定める災害で、区分所有マンションの一部が滅失した場合、「区分所有者」及び「議決権」の各5分の4以上の多数で、建物を取り壊す旨の決議ができます。
建物取壊し決議は、単に建物を取り壊すものであり、敷地は関係ないため、①②とは違ってその決議要件に「当該敷地利用権の持分の価格」は含みません。
これで、滅失した建物の取り壊しができ、敷地だけが残ることになります。
この敷地はどうするのでしょうか?
取り壊し決議や、区分所有者全員の同意に基づいて取り壊された場合は、その政令から3年は原則として敷地の共有持分について、分割請求をすることはできません。
売却するのか、新しく区分建物を建てるのか、その他に一体どのように処分や利用をしていくのでしょうか。
まとめ
このように、災害によって被害を受けたマンションを、建て替えたり、売却したり、処分しやすくするために、被災マンション法という法律があり、過去の震災から学び、法律の内容は改正されています。
区分所有マンションは多くの人々で共有する財産であり、この法律の規定を理解し、適切に対処することが不可欠です。
被害具合による各決議などの説明が長く、分かりにくくなってしまったかもしれませんが、何かの参考になれば幸いです。
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