意思決定支援とは、がん看護の研修で学んだこと
不動産・相続について勉強中の、ワンダーランドMAIMAIです。
不動産とは関係ないですが、看護師時代に受けたがん看護の研修で学んだ意思決定支援について、興味深い内容だったので書いてみようと思います。
病気になると、迫られる意思決定
病気になると、私たちはたくさんの選択や意思決定を迫られます。
病気が見つかる時の一般的な経過としては、
まず、何かしらの自覚症状が起こります。
その症状の診察を受けるために、病院を選択して受診します。
そこで診断のための検査を受けます。
検査結果がそろうと、医師から告知という形で、その検査結果や病状、治療法の説明をうけます。
この時点では詳しいことは分からず、総合病院などの大きな病院を受診するよう紹介状などを出されることもあるでしょう。
大きな病院の中でもどの病院を受診するのか、また選択を行わなければなりません。
そして、がんの診断、この時点ではがんの疑いとなることも多いかもしれませんが、診断が出ると、治療方針の選択ということになります。
がんの治療は多様化しており、手術や放射線療法、抗がん剤など複数ある中から、それらを組み合わせて行うことがほとんどです。
手術を受けてから、摘出した組織検査の結果で、抗がん剤による治療や放射線療法を行うのか選択する場合もあります。
そして、手術で1週間程度入院した後、手術後初回の外来受診で、医師からその組織検査の結果を告知され、がんなのか、どのような種類のがんなのか、進行しているのか等の話をされます。
その告知を受けて、次の治療方法を選択することになります。
この手術後初めての外来受診は、患者さんにとっては緊張感のあるものだと思います。
また、手術でがんを完全に取り除いた場合や、抗がん剤や放射線治療でがん細胞が消えたような場合も、その後定期的に病院に通い、検査を受け、再発がないかを確認していきます。
その検診の中で、再発が見つかった時には、再発したがんに対してどのような治療を行っていくのか、再度手術や抗がん剤治療を行うのか、手術や抗がん剤治療ができるのか、苦痛症状を緩和する緩和ケア中心で経過を見ていくのかを選択することになります。
がんの治療については、これまでにその種類のがんになった人が多い場合には、情報が多くあり、基本的な治療のコースが用意されている場合が多いです。
ガイドラインと言い、だいたいの医師はそれに従いながら、その患者さんの病状や希望などに合わせて治療法の選択肢を出してくれるかと思います。
大まかな流れはこんな感じですが、読んでるだけでしんどくなりますよね。
とにかく訳の分からない状況の中、意思決定を迫られることが多くあります。
もし自分が “がん” と告知を受けたら・・・
私自身が、がんと告知を受けたら、多分その後の医者の話なんてほとんど耳に入っていないと思うし、その時返事していてもきっと理解していなくて、病院を出る前にはもう忘れていると思います。
でもそんな中、手術の日を押さえなければならないとか、
抗がん剤をするにも病棟のベッドを押さえなければならないとか、
いつから入院出来るのか、次の検査はいつ来れるか、
いつ家族と一緒に説明を聞く時間を作れるか、
などを聞かれ、急かされるようにいろんなことを決めていかなければなりません。
自分の体のことなのに、周りだけがどんどん動いていって、自分は置いていかれているように感じる人も多いのではないでしょうか。
意思決定の変化
少し前の医療現場では、患者さんには細かい病状の説明はせずに、医師が治療方針を決めて、
「僕に任せておけば大丈夫、明日から次の抗がん剤を始めるからね。」とか、
「具合が悪くなったら入院するのが一番だから、救急車に乗って病院にすぐ来てね。」
などと言って、
患者さんの方も「先生にお任せします」と言うような、医師が主体の意思決定がされていました。
がん医療において、悪い知らせをすることは避けて通ることができません。
相手に悪い知らせを伝えるのは、難しいことです。
相手につらい思いをさせてしまうと感じたり、自分が告知することによって相手が感情的になってしまわないかと心配すること、伝える自分自身が病気や死への恐れを持っていることなど、伝えるのが難しい様々な要因があります。
しかし最近では、患者の権利の社会的欲求の高まりから、自分の病状や治療方法について知りたいと考える人が増えており、伝えるかどうかではなく、悪い知らせをどのように伝え、分かち合うかと言う事が重要になっています。
悪い知らせを知らないことのデメリット、伝えることのメリット
悪い知らせを聞くことのデメリット、伝えないことのメリット
それらを天秤にかけ、自分自身の体のことを知り、治療方針について理解した上で治療を受ける時代になっています。
医師と患者が、情報と決定を共有する
そのような時代の中で理想とされる、医師と患者の情報共有の行い方は、
「医師と患者が情報を共有し、決定も共有する」
という「共有型」協働的意思決定モデルです。
医師と患者が連携し、情報を共有し、意見を交換し、最終的な決定を共同で行うことを指します。
医師は患者さんに対して、診断や治療法、リスク、利点、副作用などの情報を分かりやすく提供します。
患者さんは、自身の症状や状態、過去の医療経験、ライフスタイル、価値観などを医師に伝え、共有します。
医師は患者さんの視点や価値観を尊重しながら、治療計画や方針について協議します。
患者さんは提案された治療法に同意するか、あるいは拒否する権利があり、医師は患者さんの選択を尊重します。
医師と患者さんは治療の目標を共有し、患者さんの生活の質を向上させるために協力して努力します。
継続的にコミュニケーションをとり、治療計画を柔軟に調整し、最適な方法を追求しながら治療を行っていきます。
これによって、患者さん個別の状況や希望に適応した治療計画となり、治療の効果が最大限に発揮されると期待されます。
もちろん、その患者さんの性格もあると思いますので、
「自分は何も聞きたくない、全部医者が決めてやってくれればいい、何も知りたくない。」と思う人もいれば、
「医師は選択肢と情報だけ出してくれればよくて、どの治療を受けるかは自分が全部決めたい。」と考える人もいるでしょう。
もちろんその意思を伝えれば、医師もそれに沿った対応をしてくれるでしょう。
病気になってから考えるのは、難しいと思いますので、今のうちからぼんやりとでも、病気になった時に、自分がどのようにその病気を知り、治療を選択し、生きていきたいのか、考えておいても良いかと思います。
具体的には、
まずは病院で説明を受ける時には、自分一人で最初に説明を聞くのか、
誰かと一緒に聞くのか、その誰かは誰なのか。
誰か家族に代わりに聞いてもらうのか、
など考えておく方が良いです。
もし、自分は聞かずに家族に聞いてもらう場合は、代わりに聞くその人が、自分一人で抱えなければならず、また本人には嘘をついたり黙っていないといけないという辛さがある事を考えた上で、相談して決めて下さい。
治療については医師に全部任せたい!
昔ながらの、
「医者に全部決めてやってもらうのが一番いい!」
と考える方もいるかもしれませんが、病院で働いていたものとしてはあまり賛成できません。
もちろん、患者さんの “人生” や “生き方” を考えて、最善の治療法を提案してくれる医師もいますが、残念ながらそうではない医師もたくさんいます。
医師は、治療できるならばできるだけのことはやりたいと考えていることが多い様に感じます。
もちろんそれも正解なのでしょうが、治療には患者さんの苦痛も伴いますし、患者さんのそれまでの生活を大きく変えることになります。
その苦痛に見合った治療効果が有るかは誰も補償できません。
例えば、手術や抗がん剤治療による体調不良で、好きだったことができなくなることも考えられます。
こんなことを言っても、私も病気になった時には、1%でも可能性があるならば、しんどい治療でも受けたいと考えるような気もします。
それくらい、人間が生きたいと思う本能は強いものですね。
でも自分らしく生きられず、病院と自宅の往復以外は家の中で横になって過ごしている生活は、生きていると言えるのでしょうか。
こんなことを考え出すと夜も眠れなくなりますので、いったん考えるのをやめます。
患者さんの意思決定の特徴
がんなどの告知を受けた患者さんの意思決定の特徴で、医療者が理解しておかなければならないことは、
精神疾患などがなくても、患者さんは病気によって自立と判断力が低下していること
患者さんは本来的に医療者に依存する存在であること
患者さんははじめから自分自身の価値観を意識できているわけではないこと
医療者のような専門知識は患者さんにはないこと
患者さんが自分でその治療を受けることを決定したとしても、その治療は医療者に任せなければならないこと
医療行為のほとんどには正解がないこと
などがあります。
病気になった人は、知識もないし、自分がその病気にどのように向き合うのか、どのように病気と付き合っていくのかということを、すぐには見いだせるものではありません。
その中で、治療方針や入院手術などの決定を迫られます。
治療を受けていたとしても、それは本当に理解して納得して受けているわけではないこともあり、治療を受けていく中で、その選択に疑問を持ったり、気持ちが変わったり、不安定な気持ちになることも大いにありえます。
意思決定支援のための看護師の役割
看護師は、患者さんの立場に立って医師とのコミュニケーションの橋渡しをしたり、医師からの説明後に患者さんがどの程度理解できたのかを確認して患者さんの思いを代弁したり、患者さんの揺れる思いに寄り添いながら、患者さんの立場を擁護したり、患者さんの味方でなければなりません。
患者さんへの意思決定支援を行うためには、
その患者さんに適切な情報を提供すること
身体的・精神的苦痛を除去し、環境を整えること
意思決定のプロセスのどの段階にいるのかを見極めること
十分な時間を与えること
患者さんを個人として尊重すること
いつでも相談に乗り、話を聞くこと
が大切です。
身近な人が病気になった時には
身近な方が病気になられた時は、本人はショックを受け、正常な判断能力を失っている場合もあります。
結論をせかしたり、一度出した決定を変えた時に、その方を責めないで下さい。
病気の治療を考えるのは、それほどストレスが多く、正常な判断が難しく、決断が揺れ動きながら進んでいくものです。
身近な人の方が、病気について本人以上にショックを受けることもあるかと思いますので、話を聞いたり意思決定を支援することは、身近な人ほど難しいのかもしれません。
その時は、病院を受診した時に、
「時間を作って話を聞きたい。話を聞いてほしい。」
などと言って、医師若しくは看護師等の医療者と面談できる時間をとってもらって下さい。
その時間もとれない病院というのは、あなたの身体や命を預ける価値はないと思いますので、「セカンドオピニオン」で別の病院に診てもらうことを勧めます。
まとめ
考えるべきことは、どう死にたいのかではなく、最期の日までどのように生きていたいかだと思います。
病気になりこういった意思決定が迫られる中で、治療を受け回復する人ももちろんたくさんいらっしゃいますが、亡くなっていく人も多くみてきました。
病気をすると自分の身体や治療のことを考えるのに精一杯で、自分がどう生きていたいのかや、自分の身の回りの整理、これまで築いてきた資産をどうするのかなど、考えられる人は少ないのではないかと思います。
まずは、自分がどういう人生を過ごしたいのか、病気になった時にどのように対応していきたいのかを考えてみて下さい。
そして何かのご縁でこのブログを読んで下さった方、これを機会に自分の資産をどう引き継ぐのかを考えてみてはいかがでしょうか?
不動産や相続についてお困りの時は、是非ワンダーランドにご相談下さい。
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