親が亡くなったあとに発覚する「住所のズレ」。相続手続きが思わぬ足止めを食らう理由
不動産・相続について勉強中の、ワンダーランドMAIMAIです。
2026年4月から、住所変更登記の義務化が始まりました。
この制度については以前にも触れましたが、今回は少し違う角度からお伝えしたいと思います。
それは、「相続が発生したとき」に住所変更が未対応だと、何が起きるのか、という問題です。
「自分はまだ先の話」と感じる方もいるかもしれません。
しかし実際には、相続が起きて初めて気づくケースが少なくありません。
そして、そのタイミングでは少し手遅れになっている場合もあります。
今回は、住所変更登記と相続手続きが重なったときの実務的な問題を、できるだけ分かりやすく整理してみたいと思います。
1.登記簿の住所は「最後に変えた住所」のまま止まっている
不動産を購入したとき、登記簿には所有者の住所が記録されます。
多くの場合、登記をした時点の住所、つまり購入前の旧住所がそのまま残っています。
引っ越しをしても、登記簿の住所は自動的には変わりません。
これまでは、この「ズレ」を特に問題視しないケースも少なくありませんでした。
売却やローン完済のタイミングでまとめて対応すればいい、という感覚の方も多かったと思います。
しかし、親が亡くなったあとに相続手続きを進めようとしたとき、この「住所のズレ」が思わぬ障害になることがあります。
登記簿上の住所と、亡くなったときの住民票上の住所が一致していない場合、手続きがそのまま進められないからです。
2.相続手続きに必要な「つながりの証明」
相続登記を申請する際には、亡くなった方(被相続人)が、登記簿に記載された不動産の所有者と同一人物であることを証明する必要があります。
通常は、戸籍謄本や住民票の除票(亡くなった方の最後の住民票)を使って確認します。
ところが、登記簿上の住所と亡くなったときの住所が違う場合、そのままでは「同じ人」と確認できません。
そのため、「登記簿上の住所」から「亡くなったときの住所」まで、住所が変わった経緯を証明する書類が別途必要になります。
具体的には、住民票の除票に前住所の記載があれば、それで対応できる場合もあります。
しかし転居の回数が多い場合や、古い記録が必要な場合は、戸籍の附票という書類を取り寄せることになります。
戸籍の附票とは、その戸籍に在籍していた期間の住所の履歴が記録されたものです。本籍地の市区町村役場に請求して取得します。
「住所が一致していないだけで、こんなに書類が必要になるのか」と驚かれる方もいますが、これが実務の現実です。
3.住所の数だけ書類が増える
問題が複雑になるのは、住所の変遷が長い場合です。
例えば、30年前に購入した実家の登記簿住所が、その当時の住所のまま残っていたとします。
その後、転勤や引っ越しで3回住所が変わり、亡くなったときの住所が4つ目だったとすると、「1つ目の住所→4つ目の住所」というつながりをすべて証明しなければなりません。
住民票の保存期間は、転出や死亡から5年間とされています。
つまり、古い住所の記録は役所に残っていないことがあります。
その場合は戸籍の附票で補完することになりますが、戸籍が変わっている場合(結婚や分籍など)は、複数の戸籍から附票を取り寄せる必要が出てくることもあります。
こうした書類集めは、時間もかかりますし、本籍地が遠方にある場合には郵送対応が必要になることもあります。
相続手続きは、ただでさえ心理的な負担が大きい時期に進めるものです。
その中で、「書類が足りない」「別の役所にも請求しなければならない」という状況は、家族にとって想像以上の疲労感につながることがあります。
4.2026年4月以降はどうなるか
2026年4月から、住所変更登記が義務化されました。
住所に変更があった場合、変更日から2年以内に変更登記を申請することが求められます。
正当な理由なく怠った場合には、5万円以下の過料の対象になる可能性があります。
この義務化によって、今後は登記簿の住所と実際の住所が一致している状態が前提になっていきます。
そのため、義務化以降に引っ越しをして、きちんと変更登記をしている方については、相続時の「住所のズレ」問題は起きにくくなります。
一方で、義務化前に長年住所変更をしていなかった方については、その分のズレが残ったままになります。
2026年4月以前の変更については、2028年3月31日までに対応すれば過料の対象にならないとされています。
ただし、この猶予期間が過ぎたあとに相続が発生した場合、手続きの複雑さが増す可能性は残ります。
制度が変わっても、過去のズレがすぐに解消されるわけではない、という点は意識しておいた方がよいかもしれません。
5.生前に整理しておくことの意味
相続の手続きは、亡くなってから動き始めることがほとんどです。
しかし、亡くなった後では本人に確認できません。登記簿の住所がどこで、どこに住んでいたのか、その履歴をたどるのは遺族の負担になります。
生前に住所変更登記を済ませておくことは、単なる義務の履行ではなく、残された家族への配慮でもあると感じます。
「自分が亡くなったあと、子どもたちが苦労しないように」という気持ちから、生前整理や遺言書の準備をされる方が増えています。
住所変更登記は、その延長線上にある一つの手続きです。
特に、長年住んでいる方や、何度か転居されている方は、一度現在の登記簿の内容を確認してみることをお勧めしたいと思います。
登記事項証明書は、法務局の窓口やオンラインで取得できます。
費用は1件あたり数百円程度です。
現在の住民票上の住所と一致しているかどうか、まずそこから確認してみることが、最初の一歩になるかと思います。
6.まとめ
相続は、いつ訪れるかわかりません。
だからこそ、準備できることは生前に整えておく。そのひと手間が、家族の負担を大きく軽くすることがあります。
住所変更登記は、義務化によって「やらなければならない手続き」になりました。
しかし視点を変えれば、家族に余計な苦労をかけないための準備でもあります。
今の登記簿の住所が、現在の住所と一致しているかどうか。
まずはそこを確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
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