【遺言書が2通あったら?】有効・無効の判断と相続人が資格を失う行為とは
不動産・相続について勉強中の、ワンダーランドMAIMAIです。
親の死後に遺品整理をしていたら、2通の遺言書が見つかった――。
これは決して特別な話ではありません。
高齢になってから遺言を書き直す人は多く、その内容が変わることもよくあることです。
しかし、複数の遺言書が出てきたことで「どれが有効なのか分からない」「無効になる遺言はあるのか」「隠したらどうなる?」と混乱やトラブルが生じることも少なくありません。
1.複数の遺言書が見つかるのは珍しくない
高齢の親や親族が亡くなったあと、自宅での遺品整理中に、意図せず遺言書が2通以上見つかることは、実務上でもたびたびあります。
たとえば、5年前に書いた自筆証書遺言と、3年前に作成された公正証書遺言が出てきた場合、それぞれ内容が違っていたら、どちらを優先すべきなのか判断に迷うのも無理はありません。
しかし、このようなケースでは、感情的になって片方を破棄したり隠したりすることは絶対に避けなければなりません。
まずは、すべての遺言書を保管し、日付・内容・形式を冷静に確認することが第一歩です。
2.どの遺言書が有効?
複数の遺言書が見つかった場合、原則として日付が新しい遺言書が有効とされます。
ただし、新しい遺言書が以前の内容をすべて覆しているとは限らず、一部の内容のみを変更している場合もあります。
たとえば、古い遺言書に「自宅は長男に相続させる」とあり、新しい遺言書では「預金は次男に相続させる」としか書かれていなければ、自宅に関する部分は古い遺言書の内容が引き続き有効と判断されることもあります。
つまり、「新しい=すべてを無効にする」という考え方は必ずしも正しくありません。
変更部分とその意図、記載の整合性を正しく読み取る必要があります。
3.見た目では判断できない、形式の有効性
遺言書が存在していても、それが法律に定められた方式を満たしていなければ、無効と判断されることがあります。
とくに自筆証書遺言の場合、本人が全文を自書していること、日付・氏名が明確に書かれていること、そして押印があることが求められます。
形式に不備があると、たとえ内容がしっかりしていても、法的には効力が認められないおそれがあります。
また、自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所での「検認」という手続きも必要になります(※公正証書遺言には検認不要)。
一方で、見た目が簡素であっても要件を満たしていれば有効と認められる例もあります。
たとえば「紀州のドンファン」として知られる実業家・野崎幸助氏の遺言書がそれにあたります。
走り書きのように見える内容でも、日付・氏名・押印を備え、全文を本人が書いていたことで、最終的に有効と判断されました。
外見の印象や文字の乱れだけでは有効性を決めることはできません。
まずは形式面を一つずつ丁寧に確認し、必要に応じて専門家に確認をとることが大切です。
4.遺言書を破棄・隠した人は、相続できなくなる?
ここで特に注意すべきなのは、自分に不利な遺言書を見つけて破いたり、隠したりする行為です。
こうした行為は、民法に定める「相続欠格」に該当するおそれがあります。
相続欠格とは、一定の非行があった相続人に対し、法律上当然に相続人としての資格を失わせる制度です。
具体的には、以下のような行為が欠格事由とされています。
●遺言書の偽造・変造
●遺言書の破棄・隠匿
●被相続人を脅迫・詐欺して遺言させた場合
●被相続人を殺害・傷害した場合(未遂含む)
「破棄や隠匿」は、実際によく起こるトラブルです。
「この遺言がなければ私が不動産をもらえたのに」という思いから、感情的に行動してしまうと、結果として自分自身が相続人でいられなくなるという、深刻な事態を招きます。
遺言書の内容が気に入らないとしても、それを争うには法律に則った手続きが必要です。
無理に排除しようとせず、まずは冷静に専門家へ相談することが大切です。
5.「相続人の排除」という制度もある
相続人の資格を失う制度としては、相続欠格のほかに「相続人の排除」という制度もあります。
排除は、相続人から被相続人に対して虐待や重大な侮辱、著しい非行があった場合に、被相続人の意思によって家庭裁判所に申し立てて行う手続きです。
遺言書に「○○を相続人から排除する」と記載されていれば、それを根拠に相続開始後に排除が認められる場合もあります。
排除が認められると、その人物は相続権を失いますが、相続欠格と異なり、「被相続人の判断」で排除できるのが特徴です。
なお、排除された人の子(つまり代襲相続人)は、原則として相続権を失いません。
遺言や相続では、被相続人の意思が尊重される一方で、それをめぐる法律的な線引きもきわめて明確です。
このような制度の存在も知っておくと、全体像が見えてきます。
6.複数の遺言書が見つかったときの対応手順
遺言書が2通以上見つかったときは、まず何よりもすべての遺言書を保管することが第一です。
「新しい方だけ残せばよい」などと考えて、勝手に破棄したり他の相続人に知らせない行動は厳禁です。
次に、それぞれの遺言書について以下の点を確認します。
◎作成年月日(どれが新しいか)
◎記載内容(重複・変更の有無)
◎作成形式(自筆証書か、公正証書か)
◎法的要件を満たしているか(署名・日付・押印)
自筆証書遺言が含まれている場合は、家庭裁判所で「検認」という手続きを経る必要があります。
検認の前に開封してしまうと、これもトラブルの元になりますので注意が必要です。
内容に疑問がある、他の相続人と意見が異なる、登記の進め方が分からないといった場合は、早めに相続や不動産に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
7.まとめ
遺言書が2通以上見つかったとき、どれが有効か、どのように手続きすべきかは、一見して判断が難しいこともあります。
しかし、日付・内容・形式を丁寧に確認することで、法的に正しく進めることが可能です。
最も注意すべきは、感情的になって遺言書を破棄・隠匿してしまうこと。
これは「相続欠格」に該当し、結果として自分が相続人でいられなくなる重大なリスクがあります。
相続は感情と法律が交差する場面だからこそ、冷静な判断と専門的な知識が欠かせません。
ワンダーランドでは、不動産を含む相続に関する手続きやご相談を多数取り扱っております。
遺言や相続でお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
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