最近よく聞く「相続時精算課税制度」。不動産的にどういう存在?
不動産・相続について勉強中の、ワンダーランドMAIMAIです。
最近、ニュースや新聞の経済面で「相続時精算課税制度」という言葉を見かけることが一段と増えました。
2024年の税制改正によって「年間110万円の基礎控除」という新しい枠組みが加わり、制度が始まってから少し時間が経ちましたが、改めて「わが家にも関係があるのでは?」と関心を持たれているオーナー様も多いようです。
私自身、日々の仕事の中でお話をお伺いしていると、この制度に対する期待と不安、その両方を肌で感じます。
しかし、名前は聞いたことがあっても、その中身を正確に理解し、ご自身の不動産資産と紐付けて判断するのは、決して容易なことではありません。
1.制度の「敷居」が下がった、その本当の意味
そもそも相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫に対して財産を贈与する際に選択できる制度です。
最大2,500万円まで贈与税がかからずに資産を移せる一方で、その名の通り「相続の時に、贈与した分を合算して税金を計算し直す(精算する)」というルールになっています。
以前のこの制度は、一度選択してしまうと、たとえ少額の贈与であってもその都度申告が必要になるという、事務的な手間の多さがネックとなっていました。
「一度選んだら後戻りができない」というプレッシャーもあり、多くのオーナー様にとって、少し敷居の高い選択肢だったのが本音ではないでしょうか。
そこに加わったのが、2024年からの「年間110万円の基礎控除」です。
この改正の大きなポイントは、制度を選んだ後であっても、年間の贈与額が110万円以内であれば、贈与税がかからないだけでなく、税務署への申告も不要になったという点にあります。
この「手間がなくなった」という変化は、心理的なハードルを下げました。
少額の現金をコツコツと次世代へ移しながら、特定のタイミングで大きな資産を動かす。
そんな柔軟な考え方が、一つの現実的な道として広がってきたのです。
2.不動産資産と「評価額の固定」という魔法
不動産を所有されている方がこの制度を検討される際、大きな特徴として語られるのが「評価額の固定」という仕組みです。
相続時精算課税制度を使って贈与された財産は、将来相続が発生した際、当時の贈与時の価格で相続財産に加算されます。
つまり、贈与してから相続までの間にその土地や建物の価値が上がったとしても、税金の計算上は「贈与した時の価格」のままで据え置かれるのです。
たとえば、現在再開発が進んでいる大阪の特定のエリアや、将来的に地価の上昇が見込まれるロードサイドの土地などを想像してみてください。
あるいは、大規模な修繕を控えており、今のうちに収益物件として次世代に渡しておきたいというケースもあるでしょう。
今の価値で「時間を止める」ことができるこの仕組みは、資産の成長を見守る方にとっては、一つの後押しとなります。
しかし、ここで私がいつも感じているのは、「価値が上がる」というのはあくまで一つの予測に過ぎないということです。
街の姿が変わるスピードが早い今、10年後、20年後の地価を確実に見通せる人はいません。
だからこそ、「数字上の得」だけを追い求めるのではなく、その不動産を誰がどのように守っていくのかという、ご家族の意思が先にあるべきではないかと思っています。
3.小規模宅地等の特例との「天秤」
ここからは、実務の現場でよく話題に上る、不動産特有の留意点について少し深掘りしてみたいと思います。
このあたりが、この制度を単純な「節税策」と言い切れない難しい部分でもあります。
まず、多くの方が相続対策の柱として考えられているのが、自宅や事業用宅地の評価額を大幅に減額できる「小規模宅地等の特例」です。
実は、生前贈与で土地の名義を移してしまうと、相続時にこの強力な特例を受けることができなくなります。
「贈与税をゼロにしたけれど、将来の相続税がそれ以上に増えてしまった」という逆転現象が起きないか。
これは、土地という大きな資産を動かす前に、必ず検討しておかなければならない「わが家の天秤」です。
4.目に見えにくい「移転コスト」の存在
税制上のメリットに目が向きがちですが、不動産を動かすには実費がかかります。
相続によって名義を変える場合と、贈与によって変える場合では、登記にかかる費用、つまり登録免許税の税率が大きく異なります。
さらに、相続ではかからない「不動産取得税」も、贈与の場合は原則として考慮しなければなりません。
これらに加えて、契約書の作成費用や登記手続きの実費などを積み上げていくと、「今、あえて名義を変えることによるトータルコスト」が意外と重くのしかかることが分かります。
こうした「入り口のコスト」を正しく把握することが、冷静な判断への第一歩となります。
5.将来の売却を見据えた「取得費」のバトン
お子様がその不動産を一生持ち続けるのであれば問題ありませんが、将来的に売却を検討される可能性もゼロではないはずです。
その際、税金の計算の基になる「取得費」、つまり親御様がその土地を買った時の価格も、そのまま次世代へと引き継がれます。
「もらった時の時価」でリセットされるわけではないため、将来の譲渡所得税の負担がどの程度になるのか。
そこまで視野に入れておくことは、次世代への本当の思いやりと言えるかもしれません。
長期的な視点を持つことで、今この瞬間の選択がよりクリアに見えてくるものです。
6.数字の迷路を抜けた先にあるもの
ここまで、少し踏み込んだお話も交えて整理してきましたが、いかがでしょうか。
正直なところ、「相続時精算課税制度を使うべきかどうか」という問いに、たった一つの正解があるわけではありません。
ご家族の人数、資産の内訳、そして何より、これからどのような暮らしを大切にしていきたいかという想いによって、答えはそれぞれ異なるからです。
日々の仕事の中で、いろいろなお話をお伺いする機会がありますが、皆様が抱えていらっしゃる悩みは、制度の仕組みそのものというより、もっと「言葉にしにくい、漠然とした不安」であることも多いように感じます。
「子供たちに負担をかけたくない」「この場所をどう繋いでいけばいいんだろう」。
そんなふうにふと思った時、複雑な計算式を解く前に、まずはその想いを誰かに話してみる。
そうすることで、少しずつ優先順位が見えてくることもあるかもしれません。
制度が始まってから少し時間が経ちましたが、改めて「これからのこと」をゆっくり考え始める一つのきっかけにいただければ嬉しいなと思っています。
7.まとめ
少しずつ浸透してきた「相続時精算課税制度」のおかげで、私たちの選べる道が以前よりも広がりました。
ただ、道が増えた分、「どれが自分に合っているのか」とかえって迷われることもあるかもしれません。
個別の具体的な税務判断や法的な手続きについては、もちろん税理士さんや弁護士さんといった専門家の方々の力が欠かせません。
ですが、その前段階にある「そもそも、わが家の場合はどんな道があるのかな?」という頭の整理の部分で、私も一緒に考えるお手伝いができればと願っています。
「ちょっと気になっていることがあるんだけど」 そんな風に、気負わずにお声がけいただける存在でいられたら。
大阪の街で、皆様のライフステージの傍らにいさせていただく一人として、これからも誠実に、一歩ずつ歩んでいきたいと思います。
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不動産に関するお困りごとがありましたら、ぜひワンダーランドにご相談ください。
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