サブリース契約についての過去の裁判
不動産・相続について勉強中の、ワンダーランドMAIMAIです。
レ○○○ス等で話題になった、30年間一括借り上げは、一部の賃貸物件の賃借人に対して提供されていたサブリース契約の一種です。
前回、サブリースのブログ(あなたのサブリース契約は大丈夫ですか?)
を掲載した後にも、実際にマンションの売却を考えておられるオーナー様が、サブリース業者との契約を確認すると、30年間一括借り上げの契約を結んでいるということがありました。
そのような契約をしている物件の売却はしにくくなります。
サブリース業者とのマスターリース契約を解約したいと思っても、過去の裁判で、借主であるサブリース会社が借地借家法で保護されるため、解約ができないという判決がありました。
そこで、実際に裁判でどのような判決があったのか調べてみました。
1.サブリース契約で賃料減額請求が認められた例
事業者Aは、サブリース業者Xと20年間、原則として途中解約ができないサブリース契約を結んでから、転貸事業用ビルを建築していました。
その契約内容は、2年ごとに賃料を8%ずつ上げていくという契約で、急激なインフレ(物価の上昇)があった場合は、協議の上さらに賃料を上げることができるというものでした。
また、いかなる場合にも賃料は下げない等の条項も規定されていました。
事業者Aにとっては、賃料が下がることはなく、上がっていくことが約束されており、おいしい話です。
バブルで不動産価格がどんどん上がっていた背景もあり、このような契約が結ばれたようです。
しかし、サブリース業者Xは、契約後そのビルが完成する直前に、賃料額が不相当になったとして、借地借家法の規定に基づき賃料を減額するよう訴えを起こしました。
(ちょうどこの時期にバブルが崩壊したのです。)
事業者Aにとっては、完成もしていない、稼働する前から、約束の賃料を安くするように言われて、不本意だったことでしょう。
借地借家法では、たとえ賃料が減額されないという契約がされていたとしても、借主を守る観点から、それは無効となります。
反対に増額しない旨の特約は、借主にとって有利な特約だから有効です。
借地借家法は、立場の弱い借主を守るように作られています。
例えば
「賃料を一切増減しない。」との特約がある場合、
貸主からの賃料増額請求は特約通り不可能となり、
借主からの賃料減額請求は特約にかかわらず可能となります。
このようにサブリース業者Xは借地借家法を盾にして、契約内容にかかわらず賃料の減額請求は有効だと主張したのです。
もちろん周囲の家賃相場に比べて不相応になっているという事情も、もっともな主張だったのでしょう。
裁判では、この契約に借地借家法32条の借賃増減請求権の規定が適応されるのかどうかが争われました。
一審では、このサブリース契約は建物賃貸借契約の実質を備えていないとして、借地借家法は適応されず、サブリース業者Xの賃料減額請求は棄却されました。
しかし二審では、この契約は建物賃貸借契約であって、借地借家法が適応されることは明らかで、賃料を自動的に増額する特約を結んでいたとしても、サブリース業者Xが賃料減額請求権を行使することができるとしました。
事業者Aは上告し、判断は最高裁に委ねられました。
最高裁判決では、サブリース契約への借地借家法32条の適応を肯定し、賃料減額請求権の行使を可能とする判断が示されました。
事業者Aが物件賃貸部分を使用収益させ、その対価としてサブリース業者Xに賃料を支払うというものであり、建物の賃貸借契約であることが明らかであり、借地借家法が適応されるというものでした。
つまり、サブリース契約であっても、通常の建物の賃貸借契約と同様に借主は守られ、賃料を減額できない旨の契約をしていても、賃料を減額するよう求めることはできると言うことです。
2.サブリース業者との賃貸借契約の更新拒絶について、正当事由が否定された事例
共同住宅の8フロアを賃借、第三者に転借することが得きる特約付きで、賃貸借契約を締結していたサブリース業者Aに対して、貸主のBが契約期間満了を持って契約を終了させ、以降は更新しない旨の通知をしました。
ところがAは更新拒絶に応じず、貸主BがAに対して明け渡しと損害金の支払いを求めましたが、Aは契約の更新拒絶には正当事由がない旨を主張して争いました。
裁判所は、この契約は建物の賃貸借契約であることが明らかで、更新を拒絶するには正当事由が必要としました。
正当事由とは、当事者双方の利害関係その他諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして妥当と認めるべき理由です。
貸主Bはサブリース業者Aから月々の賃料を得られており、事業として転貸して収入を得ているAに比べて、建物を使用する必要性は低いと考えられます。
また、サブリース業者Aは建物部分を転貸していて、その転借人にとっては、建物部分を使用する必要性が明らかで、貸主Bが建物を一括でサブリース業者Aに貸し出した時点でこのような使用形態は当然に予定されていたものだと言うことができます。
これらのことから、
貸主Bはサブリース業者Aに比べて、建物を使用する必要性は低いため、サブリース契約の契約期間満了や立ち退き料等の申し出等を考慮しても、貸主Bの更新拒絶には正当事由があるとはいえない。
とされました。
「サブリース」については、借地借家法が適応され、サブリースも建物賃貸借契約である以上、正当な事由なしに更新拒絶できないといえます。
この判決は、正当な事由について、当事者双方の建物を使用する必要性について、細かく判断したものです。
ちなみに、これは平成24年の判例です。
3.サブリース契約には借地借家法の適応がないとして建物明け渡し請求をしたが、棄却された事例
サブリース会社Cと賃貸借契約を締結した賃貸人Dが、借地借家法第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)における「正当事由」の規定は、サブリースのような契約形態は想定の範囲外で、契約書に解約申し入れで解約できる約定があることを理由に、建物の明け渡しと使用損害金の支払いを求めました。
賃貸人Dは、相続対策として納税資金を捻出するために、この物件を賃借人や転借人の無い状態でできるだけ高額で売却する必要があり、物件の引渡を求めたようですが、
このような事情は「正当事由」として考慮すべき事情として大きなものとはいえず、
サブリース会社Cが転貸によって事業を行い建物を使用することが事業の根幹をなしていることの方が重要視されました。
サブリース会社Cは自由に解約ができる旨の契約書を作成して契約しながら、後に借地借家法に反するとして、賃貸人Dからの解約の申し入れを無効だと主張しています。
この主張は借地借家法に基づいた主張であり、信義則に反する(契約違反、約束違反)とはいえないとされました。
なんだか納得できないような話ですが、借地借家法では、通常の賃貸借契約で不利になる借主を守られるためこのような結論になります。
判例を調べていると、借主が守られるため、サブリース業者の主張が勝つようなものばかり出てきます。本当に厄介な契約ですね。
4.サブリース会社に対する建物オーナーの賃貸借契約解除及び建物明け渡し請求が認容された事例
最後に、サブリース会社ではなく、賃貸人である建物オーナーの主張が認められた判例についても書きます。
サブリース会社Eとの間で賃貸借契約をし、家賃保証及び満室保証を受けていた建物オーナーFが、老朽化した自宅の補修改築のためにまとまった資金が必要となり、サブリース会社に貸していた建物を空室の状態で売却することを望み、サブリース会社Eに対して賃貸借契約の解除及び明け渡しを求めました。
建物オーナーのFは、父親からこの建物を相続しました。
相続前から、サブリース会社Eとのサブリース契約が結ばれており、相続後に新たに4年間の契約で、合意更新していました。
契約内容には、解除・解約について、
本件契約を期間満了にて終了する場合は、相手方に対し期間満了の6ヶ月前までに書面にてその旨を通知し、双方合意の上執り行うもの
とされていました。
期間満了の6ヶ月前にちょうど転借人が退去することとなり、建物オーナーFは期間満了後サブリース契約を更新しない旨と、転借人の退去後は新たに入居者を募集しないように求めました。
サブリース会社Eへは、満了の6ヶ月以上前に書面で通知を行っていました。
にもかかわらず、サブリース会社Eは新たな入居者を募集し、入居させ、
建物オーナーFが契約の更新を拒絶することには正当な事由がないため、
サブリース契約は自動更新されると主張しました。
裁判所は、立ち退き料50万円の支払いを条件に、建物オーナーFとサブリース会社Eとのサブリース契約の解除を認めました。
この判決の中でも、サブリース契約には借地借家法が適応されるということは明言されています。
要点は、借地借家法28条の建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件における「正当事由」があるかどうかです。
建物オーナーFの自宅が築60年を超えておりその資金を捻出するために、サブリース会社Eに貸していた建物をできるだけ高額で売却する必要があり、
ちょうど転借人が退去するタイミングとなり次の入居者を募集せずに空室の状態でサブリース契約を終了させる必要性が強かったと言えます。
このことだけでは正当事由を充足すると言うことはできないけれども、サブリース会社Eがこの物件の転貸で得ていた利益が月3.3万円に過ぎず、Eにとってもこの物件を使用する強い必要性があるわけではないので、相当額の立ち退き料を支払わせることで正当事由を補完することができる
として、建物オーナーFの主張が認められました。
収益物件の売却を考えているときに、ちょうど転借人が退去して空室になるなんて、建物オーナーにとっては実にタイミングの良いことですね。
しかし、サブリース会社が新たに入居者を入れてしまって、
「なんてことをしてくれたんだ!」という気持ちだったことでしょう。
この判例では、立ち退き料50万円を支払うことでサブリース会社との契約解除と明け渡しは認めていますが、新たな転借人との契約関係については触れられていません。
「賃借人の更新拒絶により賃貸借契約が終了しても、賃貸人は信義則上訴の終了を再転借人に対抗できない」
とされた事例があり、転借人の利益を保護する方向性が示されています。
分譲貸しのマンションに引っ越したところ、オーナーの都合で追い出されたとなると、転借人の立場で考えると、かなり損害は大きいですね。
オーナーにとっても、サブリース会社に50万円払わないといけないし、新しい入居者は簡単に追い出せないし、空室状態で物件を売ることができないし、
自分の主張が認められたとは言っても、納得できないものが大きく残ってそうです。
まとめ
サブリース契約は、物件や賃料の管理を全て任せることができるメリットもありますが、それ以上にオーナーが損をしてしまう可能性を秘めていますので、おすすめはできません。
契約を結ぶときには慎重に、契約内容を十分に確認した上で行うよう、注意して下さい。
良ければ以前書いたこちらのブログ「あなたのサブリース契約は大丈夫ですか?」もご覧下さい。
⭐︎☆ 有限会社ワンダーランド☆⭐︎創業:平成2年4月
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